6月5日、プラハで行われた陸上の国際競技会の決勝にて、桐生祥秀選手が100m10秒11(追い風0.4メートル)を記録しました。
桐生選手は高校3年生の時(2013年4月)に100m10秒01を記録し、日本人初の100m9秒台を期待されている陸上選手です。
今回の大会を振り返って、桐生選手は「悪くはないが物足りない」「タイムは1位の選手と一緒だったけれど、勝負に負けたのは悔しい」とコメントしました。桐生選手は今月8日からローマで行われるダイヤモンドリーグに出場する予定です。
さて、今回桐生選手が注目を集めたことから、過去にウサイン・ボルト選手が桐生選手へかけた言葉が再び話題になっています。
それは、2013年12月に放送されたTBS系列の『News23』で行われた、ボルト選手と桐生選手の対談でした。
ボルト選手はジャマイカの短距離選手で、人類史上最速のスプリンター(短距離走者)です。100mの自己ベストは9秒58で、名前にかけてライトニング・ボルト(稲妻)という愛称までつけられています。
世界陸上競技選手権大会においての史上最多の金メダル獲得者であり、100m・200m・400mリレーの世界記録保持者であり、昨年のリオ五輪でも三冠を達成している選手。
そんな短距離選手全員の憧れといっても過言ではないボルト選手が、桐生選手へ贈った言葉がこちら。
大事なことは、トップスピードに乗ったらフォームを保ち、スピードを維持することだ。
多くの選手は、トップスピードから、さらに速くなろうとする。
それでは、速度にテクニックが追いつかず、逆に遅くなってしまう。
トップスピードに乗ったら、それ以上は速くならない。
だからといって「その記録を超えよう」と焦ってはいけない。
速く走ることばかり考えて、逆に遅くなる選手はたくさんいる。
速く走ろうなんて考えるな。「自分の走りをすることだけ」を考えたほうがいい。
より速く走ろうとする桐生選手に、「焦るな」「速く走ろうと考えるな」と伝えました。
このボルト選手の言葉は、陸上だけでなく他の仕事や学業などにも当てはまると、当時から話題になりました。
また、この時もう1つボルト選手が日本の陸上界と桐生選手にそれぞれ伝えた言葉があります。
それがコチラ。
最後に1つ、いいかい。日本の陸上界にいいたい。
桐生にあまりプレッシャーをかけないでほしい。
いいか、桐生。自分のために走れ。それが国のためになればいい。
まずは『自分のために走る』。そして『楽しむ』。
それが日本のためになるんだ。決して国のためだけに走ってはだめだ。
なんて素晴らしい言葉…!
陸上やスポーツに限らず、周囲のプレッシャーに潰されてしまう人は少なくありませんよね。
応援することと要求することは全然違います。
陸上界に限らず、多くのメディア・人も肝に命じたい・命じてほしい言葉ではないでしょうか。自分のために頑張ったことが、結果的に誰かのためにもなったら最高ですよね。
この時の対談を、桐生選手は今でもよく覚えていると話しています。
ボルト選手の言葉どおり、桐生選手にはどうか自分のために、楽しんで走ってほしいと思います。
「9秒台に届かなかった、次に期待したい」ではなく、「調子は大丈夫か、次また頑張ってほしい」と伝えたいものです。